WELQと週刊現代から学ぶもの

顧客website アンケートに寄せて

新聞、TV、雑誌、インターネットなどの情報媒体を通じて、私たちは健康医療情報や特集を目にしない日はありません。私たちを取り巻く情報のトレンドは、身近な交通広告からも見て取れます。駅舎からホームにかけての看板の広告主は教育産業と健康産業、そして医療機関が大勢を占めています。電車に乗れば中吊広告やデジタルサイネージから発信されているのは、政治経済・芸能ネタを制して水素水、糖質制限、芸能人のガン闘病記など、健康医療情報に数多な関連情報が加えられて発信されている状況です。こんなことからも健康医療情報は、多くの人の関心を集めるキラーコンテンツであることがわかります。

『週刊現代』歯科特集から学ぶ

健康医療情報に取り囲まれた現在、長くにわたり歯科医院現場を見てきた私からは、メディアの医療情報には、針小棒大、脚色過剰で、眉をひそめたくなる内容も少なからずあります。その最たるものが、11/5号の『週刊現代』の医療キャンペーンです。週刊誌の持ち味は、一言でいえばセンセーショナリズムですが、その前提は確かな論拠に基づき、メリットとデメリットを踏まえて報じる姿勢が求められます。しかし、『週刊現代』の歯科特集は、デメリットばかりを強調することによって、歯科医療知識の乏しい生活者の関心を煽るばかりではなく、歯科関係者をも煽動して雑誌の購買数を上げるという手練手管が、一読して見え隠れしていました。

案の定、何人かの歯科医師が自らのblogでこの記事に対し言及して、まんまと講談社の『禁じ手』に乗っかっていました。というのは、『週刊現代』の歯科批判を歯科医師自らがネットを通じ拡散して、週刊誌の販売促進にひと役買うお人好しを演じたことになるからです。全くもって気が滅入ってくる話です。話は横道にそれますが、出版社は一般人からの購買よりも全国10万人余りの歯科医師のひんしゅくを買うことで、歯科医師の購買意欲を刺激できると、そろばんを弾いていたわけです。歯科医師はblogを書く暇があったら、編集部に抗議電話の2~3本も入れて憂さ晴らしをするしかありません。翻って、歯科医院のwebsiteでも『週刊現代』まがいの「それは健康によくない」「健康保険では・・」といった表現で科学的知識が乏しい生活者をカモにしているようでは、信頼性を置き去りにしいる『週刊現代』と同じ穴の狢ではないでしょうか。

DeNAも歯科医院もSEO対策は同じ

『週刊現代』の歯科特集のような論拠薄弱な情報が、新聞・TVよりも野放しにされているのが、インターネットであることは誰もが知るところでしょう。11月に上場企業のDeNAが運営している月間ユーザー数2000万人の健康・医療情報サイトWELQが休止に追い込まれたのは耳目に新しいところです。このことは、改めてインターネット情報の危うさを浮き彫りにすると同時に、健康医療情報への生活者の関心の高さを社会に示す結果となりました。TVの視聴率、新聞・雑誌の発行部数にあたる数字が、インターネットでは検索順位になります。健康・医療のまとめサイトWELQは、掲載記事の信頼性を問う声が以前から聞こえてきましたが、今回の休止騒動で図らずも検索結果を人工的に上げるSEO対策にも非常に力を入れていたことが露見しました。私は仕事柄、医療用語などをよく検索するのですが、必ずといっていいほど、厚生労働省サイトやメルク・マニュアルよりも上位にくるサイトがWELQでした。そうするとWELQの病症説明をなんとなく読んでしまうのですが、「なんとなく」では済まない長文に出くわすことが度々でした。しかし、メルク・マニュアルでは同じ病症説明でもWELQの1/5程度に簡潔に説明されています。ですから、WELQサイトを訪れる気はさらさらないにもかかわらず、検索すると必ずメルク・マニュアルの上位にくる鬱陶しさには閉口したものです。

WELQ休止で付随して報じられているWELQのSEO対策への執着を知って、WELQの饒舌な長文説明文は、Googleの検索上位対策の肝だったことがわかりました。WELQに関する一連の記事で専門家がSEO対策に言及していますが、それをまとめると以下のようになります。

リンクの基本原則

  • ○他の多くのサイトからリンクされている
  • ○優良またはその分野専門サイトからリンクされている
  • ×関連性のないサイトからのリンク
  • ×意図的に作ったサイトからのリンク

コンテンツの基本原則

  • ○サイト内容の十分な専門性
  • ○内容に添った文章量が多いこと
  • ×他のサイトのコピー文書
  • ×文脈に関係ない単語が羅列されている
  • ×閲覧した人がすぐに退出すること

何のことはありません。誰もが知っていることばかりです。WELQはSEOの基本原則を徹底したことに加え、一般的なwebsiteでは不可能な超長文を用意した結果の検索上位だったわけです。しかし、このことによって冗長な文章を書き流して、生活者が最後まで読まない文章や理解されないようなコンテンツを作っていては、本末転倒と言わざるを得ません。言い換えるとwebに限らず世の中ものは全て、ヘッドラインではできていないためキャッチーな見出しでは信用を得ることはできないのです。つまり歯科医院でしたらコンプライアンスの高い患者に来院してもらうには、何よりも文脈が重要ということです。

顧客医院websiteアンケートへの所感としては、即時解決できない辛口のコメントになってしまいました。生涯顧客として患者に寄り添うには、科学的視点に立って、患者と歯科医院の文脈をwebsiteで展開していくことが重要です。クレセル顧客のwebsiteがwebsiteのスタンダードとなり、歯科界の主流となることを願っています。