インプラントとマーケティング

昨日は2軒のクライアント医院で、イプラントの話になった。その後、ある財団からは、中国の富裕層を受け入れるインプラント施設への専門医のアサインとプロデュースを依頼された。夜は夜で、ポルトガルのマロークリニックが銀座4丁目にオープンするとの話も耳に入ってきた。マスメディアからはインプラントへの風当たりは強いが、歯科業界ではどこ吹く風である。

 
個人でもチェーン展開する法人でも、インプラントを語るとき、患者QOLの向上と医療提供側との相互利益の合理性が切り口にされる。なるほど、QOLはコピーとしてはいささかインパクト不足だが、一見、生活者が納得するだけの整合性はある。一見と言ったのは、インプラントの引き合いに使われる入れ歯に比べて、インプラントはQOLの面では優れていると言われているが、そうは思えないからだ。


インプラントのコピーに使い古された「笑う、食べる、話す」ことに、QOLは集約されない。QOLは「生活」「人生」「生命」すべてを包括した質であって、「笑う、食べる、話す」は、主に「生活」の質を意味する。この一部を切り取って「QOLの向上」と繰り返しても、ますます10万円インプラトに市場を席巻されるだけだ。高齢者のQOLは、「健康」と「自立」が最も重要とされている。セルフケア可能な入れ歯は、インプラントに比べてこの点では明らかに優位で、一概にインプラントがQOLの面で優れているとは思えない。
 

しかし、インプラントの弱みこそが「伸び代」と考えることがマーケティング思考だ。首都圏では、05年から20年までに75歳以上人口が154万人増え高齢化が加速し、その10%が収容型施設に入るとされる。この人口増加層が、即ち現在のインプラント対象者層だ。入れ歯と違いセルフケアが不可能なインプラント治療は、通院が困難になる高齢者のための、メインテナンスネットワークづくりなくして、QOLを突破口に需要は拡大しないだろう。
 

インプラントのマーケティングは、オペレーションやプライスのフェーズからメインテナンスのインフラづくりに入った。