話をややっこしくしているのが、受講料の半額負担という扱いだ。
「こんなでは使えない、勉強してこいよ」というスキルアップを他人任せにする甘い気持ちと、「半額ぐらいなら負担してもいいか」という仏心が、仇になる。こんなケースに限って、院長の期待とスタッフの気持ちは相反する結果になる。
スタッフに期待する前に、院長自身がセミナー受講に対してコストと目的を明確にしなければ、スタッフには響かない。セミナー受講コストを、(例えば)受講料1万円+休日出勤手当て1万5千円+稼ぐべき付加価値4万5千円=7万円/1日と認識している院長は意外に少ない。スタッフ1人に1日7万円投資するという意識があれば、医院にとって有益なセミナーか否かの判断基準が厳しくなる。そしておのずと受講するセミナー目的も明確になってくるものだ。
ところが1万円の半額の5千円を負担して、スタッフ自身のスキルアップだから休日出勤扱いはナシでいこう、などとスキルアップと経費軽減の一挙両得を狙うものだから、スタッフのモチベーションも上がらないし、医院に対しての帰属意識も薄れて行く。結果、かえって医院経営にとってマイナスになる。どんなセミナーでも、スタッフの意欲をあげて受講させなければ、モノにならない。
そもそもスタッフにセミナーを受講させるということは、そのスタッフを少しでも早く戦力化して、黒字スタッフにすることを意味する。その結果として、医院の質が上がったり、医院目標が達成できるのだ。はじめから崇高な受講目的を掲げないほうが無難だ。また、スタッフ個人のスキルアップに医院がお金を出した上で休日出勤扱いにすることが、少しでももったいないと思うのであれば、端からセミナーのことなど考えずに、どうすれば残業代を減らすことができるのか考えていた方が、医院経営にプラスになる。
セミナー受講を医院経営に結びつけるハードルは高い。しかしそのハードルをクリアするのは、スタッフのスキルアップに対する院長のケレン味のない投資、お布施である。