相変わらず歯科医院の求人は困難を極めています。複数の求人媒体を利用しても効果が上がらないという院長の声を日常的に聞くようになっています。こういう状況で医院側ができることは、安易に採用して悪循環の基となるスタッフを採用しないことです。
スタッフ採用時の基準を「即戦力」「見た目」「感じのよさ」などをポイントにして、いわゆる「優秀に見える・使えそう」を基準にしている歯科医院が一般的です。このような求人側にとって「優秀に見える・使えそう」といったイメージは、転職を繰り返す人は経験と共に処世術として身に着けていき、採用後一変して不満分子の急先鋒になるケースもあります。
このような不満分子は、時として社外労働組合や弁護士法人と結託して、禿鷹のように歯科医院を食い尽くしていきます。そこまでいかなくとも、医院の労働体制やコンプライアンスの不備を逆手にとって、労働監督暑や所轄保健所などに通報を繰り返して、外部の圧力をもって自らの権利を守ろうとします。院長の身から出た錆なのですが、外部から指導によって組織体制を変えられた院長とスタッフの溝は、なかなか埋まるものではありません。
院内の不満分子と院外の圧力から自院組織を守るために、院長はスタッフ採用、労務、評価を再考する必要があります。トラブルを防ぐ採用ポイントは、優秀な人を雇おうとしないことに尽きます。随分と後ろ向きな姿勢と思われるでしょうが、優秀な人材は優れた組織に自然と集まるものです。平均的賃金より多少上げてみたところで、賃金にしか動機がない人材が集まるのが関の山です。そんなことよりも医院の採用基準を「問題を起こしそうな人」を雇わないことに軸をおくことが肝要です。
1.人手不足の時に採用しない
職場でトラブルメーカーになる人の多くは、退職者の入れ替えなど人手不足の時に採用した人が多い傾向があります。採用を焦るあまり、つい応募者の気になる悪い部分に目をつぶってしまったりするからです。また、採用選択をスタッフに任せる医院も見受けられますが、よほど医院文化を理解しているスタッフでないと、そのスタッフに都合の良い人を採用して、不満分子を増やすために採用したなんていうことになりかねません。以下2~4に該当する求職者を採用しないだけでも大方の雇用問題は未然に防げるものです。
2.健康な人を採用する
スタッフ=労働力を買う以上、健康な労働力かどうか確認するのは当たり前のことです。持病のあるスタッフを雇ってしまい急な欠勤を繰り返されて医院が混乱するケースもあります。病気があることを知らずに採用することは、スタッフにとっても医院にとっても不幸なことです。現在、採用時にメンタルヘルスに関する質問をすることに国は何の規制もかけていません。直近の1~2年に限って病歴を確認することは合理的なことです。3.転職3回以上は採用しない
女性の場合、結婚・出産などの時期に退職・転職するケースが多いことを念頭にして、退職・転職をしている時期を確認します。結婚・出産以外の時期に転職を繰り返す人は要注意です。また、同業種の職場を1~2年短期間で転職している人は、本人はキャリアアップのつもりでも、社会性に問題を抱える人が多い傾向がありますので、採用を見送る方が無難です。
4.職歴照会を積極的に行う
労働法では、経歴詐称を理由に解雇を認められることがあります。特に医療関係など学歴や資格などを重視される職種ではなおさらでしょう。このことは採用する時に職歴を重視してもよいという司法からの示唆と言えます。歯科医院にある経歴書を見ると、“○○歯科医院勤務~退職”とだけあって、所在地がはっきりしない場合が多く、まずこの点を質すべきです。また、職歴照会をためらうケースが多いのですが、同業者の歯科医院の場合、親身に応じてくれる場合が大半です。そして退職した経緯、前職場での勤務態度、人間関係などの経歴書や面接ではわからない情報が入手できることもあります。職歴照会によって、前職場で組合活動をしていたスタッフを採用しないで済んだこともあります。
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